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2024.04.12
建方(継手と仕口・金物)No.2-8
この記事の目次
1、住宅工事の全体の流れ
2、動画でサクッと見学、住宅工事
3、建方(継手と仕口・金物)のお話し
4、この工事で設計者が確認していること
5、この現場の独特なポイント(トシログ モデルハウス)
1、住宅工事の全体の流れ
この記事は以下の流れの中で、★印の工程についてです。
1)事業・基礎
2)建方(プレカット、土台、上棟、★金物、耐力壁)
3)屋根
4)外壁・窓
5)断熱
6)各職人工程
7)配線・配管
8)住宅設備・家具
9)外構
2、動画でサクッと見学、住宅工事
タイトル:建方9(継手と仕口・金物)_028 ※ご注意:音声あり!
3、建方(継手と仕口・金物)のお話し
柱と土台の継手と仕口(接合方法)の考え方には大きく2種類あり、従来からのやり方で木の加工で組み合わせていく「在来金物」の方法と、近年増えてきた「梁・柱受け金物」を使う方法です。
コストや計画の状況に合わせて選択していきたいところです。「在来金物」は断面欠損が生じやすいため技術が必要となるため、工務店さんの得意分野かどうかで判断をすることもあります。また、「梁・柱受け金物」は、含水率の評価が不十分な無垢材は使いづらく使用できる木材が海外産の集成材に限定されている、金物分のコストが増額(100万円程度/1棟)になる、などの特徴はありますが、比較的誰にでも安定した施工ができます。
この現場では、基本的には、継手と仕口は工務店さんの得意分野を活かして「在来金物」、一部「梁・柱受け金物」を使用するなど、適材適所で設計を行なっております。理由は目次の「5、この現場の独特なポイント」をご覧ください。(イラスト出展:タナカ)
4、この工事で設計者が確認していること
設計時に気をつけているポイントです。
・金物とは、基礎・柱・梁・筋交・屋根などの建物の核となる構造材、それぞれを緊結するためのもので、それぞれに形状や、短期耐力の違いがあります。
・選定のポイントは、金物にはボルトなどの出っ張りやプレートの厚みがあることを、念頭に入れることです。金物施工後に取り付ける耐力壁や外壁などが、素直に施工しやすいように選定したいものです。
↓柱脚・柱頭金物①:いわゆるホールダウン金物。基礎・柱を緊結する金物で、地震などでの強い衝撃(柱を引抜こうとする力)に耐えられるように、短期耐力も15KN~など大きな値となります。この形状が最もポピュラーで、ボルトを柱に貫通させて緊結します。
↓柱脚・柱頭金物②:こちらも基礎・柱を緊結する金物ですが別のタイプ、L型柱脚金物。短期耐力も15KNまでですが、ビスのみで施工できるので比較的施工しやすいです。
↓筋交金物:筋交を接合するには、3面接着のボックスタイプ、または2面接着のタイプがあります。ホールダウン金物がある柱間は要注意です。左の写真:柱脚・柱頭金物①のホールダウン金物を、せいの高いものに変えることでかわし、右の写真:柱脚・柱頭金物②のL型を使用することでかわしている例です。写真出典:サクッとわかる木造の作り方
↓アンカーボルト:ホールダウン金物が柱と土台を緊結するならば、こちらは基礎・土台を緊結するための金物です。揃ってとても重要な金物です。ところで、アンカーボルトも、前述のホールダウンも、右の現場写真のように基礎施工時から取り付けられています。(左のイラスト出展:匠の一冊)
↓柱脚・柱頭金物③:プレート型で、土台・柱・横架材の緊結に使用します。短期耐力は低いですが、ホールダウンほどの耐力が必要のない場所に使用し、出番は多い金物です。厚みが1mm未満のものも多く、周囲に金物が飛び出さないので、金物施工後に合板なども施工しやすいです。厚みがある場合は、柱と土台を掘り込むひと手間が必要です。
↓梁接合金物:羽子板ボルト。土台・柱・横架材の緊結に使用し、ボルトを貫通させて施工するため、アクロバティックな条件でも頼れる金物です。たとえばこちらの現場は、梁のない宙空にロフトを作っているところですが、ロフトの床を支える横架材と柱を緊結しています。(右のイラスト出展:タナカ)
5、この現場の独特なポイント
今回パネルログ構法を採用しております。ひと工夫が必要な箇所がいくつかありました。
【ホールダウン】
左の写真:通常の現場はこちら。このように、柱・梁の間には、耐力を補強する斜めの筋交が入っており、金物で緊結されています。(写真出典 ホマレノイエ)
右の写真:今回の現場です。特徴としては、105mmの厚みの柱・梁・土台の中に105mmの厚みのパネルが隙間なく嵌め込まれており、高耐力が必要な重要な箇所にホールダウンの取り付けができません!困った!!!パネル自体が耐力壁として働くように設計しているため、金物分が入るようにパネルを部分的に切り欠くこともできません。
そこで、、、
ホールダウンについては、カネシンの高耐力柱脚金物45を使って(ホゾパイプを引抜金物とする考え方)、パネルの切欠きがNGならば、柱をカットして金物を取り付けることとしました。さらに、その近傍にあるアンカーボルトも、土台と基礎を緊結するだけでなく、加えて、柱の引抜力にも摩擦で抵抗するという考え方で、高耐力のボルトを使用しています。
カネシンの高耐力柱脚金物45のウェブサイトリンク
https://www.kaneshin.co.jp/products/productsd.php?icd=1000610
【羽子板ボルト】
また、今回は、杉の角材打ちっぱなしのような建物のため、金物をあえてカッコよく見せるか、上手く隠れる金物を使う配慮が必要でした。ロフトに使った羽子板ボルトについては、上手く隠れるように、こちらの商品を使いました。(目次4で前述した写真の見栄えと比べてみてください)
タナカのパイプ羽子板かくれんぼ
https://www.tanakanet.co.jp/housing/products/2451/
【現場のご説明】
高性能でコスパの良い 「都市型のログハウス」を作れたら。無垢材の木の恩恵・ぬくもりに包まれる住み心地を、山や海辺の暮らしだけでなく、都市の暮らしといった多様なスタイルのある暮らしに馴染むように。私たちは “トシログ(都市ログ)” という愛称で、このプロジェクトを育てています。
2021年春、アトリエM.A.R.で「都市型のログハウス」一棟目の構想が始まりました。福島県会津の地で芳賀沼製作さんのパネルログ構法との出会い、都市に馴染む性能とデザインの検討、ウッドショック等でのコスト・計画変更、初めての構法による工事に試行錯誤すること2年半、チームの技術と熱意を詰め込んでいます。