Blog

ブログ・お知らせ

2024.05.12

建方(木材の選定)No.2-10

この記事の目次

1、住宅工事の全体の流れ
2、建方(木材の選定)のお話し
3、この現場の独特なポイント(トシログ モデルハウス)

1、住宅工事の全体の流れ

この記事は以下の流れの中で、★印の工程についてです。

1)事業・基礎
2)建方(プレカット、土台、上棟、金物、耐力壁、★番外編)
3)屋根
4)木工事
5)外部サッシ
6)配線配管
7)各職人工程
8)外構

2、建方(木材の選定)のお話し

木造建築は、日本では古くから親しまれてきた材料です。入手しやすく、加工もしやすい!
RCや鉄骨と比べた場合のメリットとして、昨今の建築事情においては安価である、気密性・断熱性を考えたときにも木造はいろんな対策のしようがある、将来のプラン変更に柔軟に対応しやすい等が考えられます。
デメリットとしては、大空間が作りにくい、日本の高温多湿の気候の中で使われ方・最初の施工によっては腐敗しやすい、経年で反りなどの変形が起きる、木材それだけでは火災に弱い、というところでしょうか。
メリットデメリットを分かった上で、木材の特性を十分に理解し、適切に計画したいと考えています。

木材はどこに使っている?

建物を構成する上で最も大事な「構造材」はこちら。
柱:屋根や建物の垂直荷重を支える役割
梁:柱が垂直材ならば、梁は水平材。柱とともに軸組を作る役割
土台:柱と基礎の間にあり、柱にかかる荷重を基礎に伝えていく役割

「その他で木を使う部分」はこちら。
造作(間柱や壁):仕上げとなる壁の下地材
建具:フラッシュ扉や框扉によって使う材料も異なる
家具:無垢材、集成材のほか、突板という薄い材料を使うこともある

樹種について

まず、木材には針葉樹と広葉樹がある。針葉樹は、柔らかく加工しやすいことから構造材に用いられることが多いです。それに対して、広葉樹は、硬く加工しにくい、長材が得にくいことから、間柱・家具や建具に用いられます。

針葉樹国産材・・・スギ、アカマツ、クロマツ、ツガ、ヒノキ、ヒバ
(輸入材・・・台湾ヒノキ、ベイスギ、ベイマツ、ベイヒバ、ベイツガ)

広葉樹国産材・・・アカガシ、クリ、ケヤキ、キリ、サクラ
(輸入材・・・オーク、ウォールナット、マホガニー、チーク、ラワン)

↓左の写真:間柱、右の写真:構造材

構造材に使う材料の選定

(1)流通量の観点

柱や土台には、スギ、ヒノキ、ヒバなどが耐久性が強く一般的であり、中でもスギは入手しやすくコストパフォーマンスが良い。適度に硬いベイツガは、梁に用いられることが多いです。
↓こちらの写真、左から、無垢スギ90角、無垢スギ105角、集成材スギ105角、無垢ヒノキ90角、無垢ヒノキ105角、集成材ヒノキ105角、


↓こちらの写真、CLT。修正材を交互に組み合わせて剛性を高めており、木造の大空間で柱と柱の間を大きく飛ばす必要がある梁に効果的。比較的お値段が張ります。


(2)木取りの観点

柱や土台には、中心部の「芯持ち材」を使用する。十分に乾燥しており、収縮が少ない。それに対して、周辺部の辺材=いわゆる「芯去り材」は曲がり・反りやすい材料となり、柔らかく白蟻被害に遭いやすいため、柱や土台などの構造材には使用しません。その代わり家具材や間柱、木チップなどになっていきます。余談ですが、無駄なく材を取り有効に使うことができることを「歩留まりが良い」と言います。
↓こちらの写真、「芯持ち材」は中央部の角材のことです。(写真は2024年モクコレクションの展示より)

木材の乾燥について

(1)木材は乾燥が肝要

木材の含水率という言葉を耳にしたことはありますか?
含水率%=(含水量/木材全乾重量)×100

木材を乾燥させることは、木の強度も上がり、曲がりや反りが少ないため寸法も安定、腐り、菌や虫の抑制するなど、大変重要なファクターです。

一般的に伐採したばかりの木=いわゆる「生木」 の含水率は40%ですが、構造材では15~18%、家具材では15%を使用します。

含水率は「電気抵抗式含水率計」「高周波式含水率計」「マイクロ波式含水率計」等によって測定します。
「電気抵抗式含水率計」・・・表面を測定
「高周波式含水率計」・・・表面から20mm深い部分で測定(ほぼ平均値と言われています!)
「マイクロ波式含水率計」・・・芯で測定
世の中的には「電気」式で測定している木材屋さんが多いのですが、弊社のお取引のある材木屋さんは「高周波」以上の方法で測定しておられるところもあり、やはり数字に信頼が置けますね。

(2)木材の乾燥方法

乾燥の種類を大きく分けると、天然乾燥と人工乾燥があります。昨今ではほとんどが人工乾燥です。
人工乾燥にも大きく、高温乾燥と低温乾燥があります。より効率的なのは高温乾燥で世の中にはこれが普及していますが、低温乾燥の方がゆっくり乾燥させる分、地震などの大きな力が働いた際に粘り強く抵抗すると言われています。

天然乾燥にしようとすると、十分な保管場所と、2~3年の月日が必要です。とある山の管理者の方からお話を伺うと、天然乾燥は伐採しその場に転がしておけば良いものの、大雨が降った場合に流れてしまい余計に山を荒らしてしまうこともあるとか。

人工乾燥にしても、伐採直後に製材するわけではない。伐採し、丸太のまま半年は保管、その後製材し、乾燥機に入れて1ヶ月から2ヶ月ほど。


↓こちらは、小田原の小高製材所さんの低温乾燥機。長尺40本入ります!10m級の皮を剥いだ丸太や、広葉樹や古材もお取り扱いがありました。とにかく材木屋さんはいいですね〜木の香りが素晴らしい〜!

3、この現場の独特なポイント

建物ぐるりと1周、全て柱でできているかのように見える、都市型ログハウス。実は柱と柱の間に、角材を7本組み合わせてできたパネルが嵌め込まれています。柱や土台だけでなく、このパネルも、もちろん「芯持ち材」です。

弊社は、オール無垢材にこだわっているわけではありません。集成材の良さも生かしながら、計画、その時の市場流通(=コスト)、工務店さんの得意分野、などを総合的に考えています。その結果、オール無垢材になることは多いです。杉の無垢材、もちろん硬く耐久性の良い芯材です。お取引のある材木屋さんが国産の杉の芯材を比較的安価に卸してくださいます。含水率の測定も「高周波」以上の方法で行っているため、信頼できます。

【現場のご説明】

高性能でコスパの良い 「都市型のログハウス」を作れたら。無垢材の木の恩恵・ぬくもりに包まれる住み心地を、山や海辺の暮らしだけでなく、都市の暮らしといった多様なスタイルのある暮らしに馴染むように。私たちは “トシログ(都市ログ)” という愛称で、このプロジェクトを育てています。

2021年春、アトリエM.A.R.で「都市型のログハウス」一棟目の構想が始まりました。福島県会津の地で芳賀沼製作さんのパネルログ構法との出会い、都市に馴染む性能とデザインの検討、ウッドショック等でのコスト・計画変更、初めての構法による工事に試行錯誤すること2年半、チームの技術と熱意を詰め込んでいます。

ご計画はいつの間にか始まっているもの。

ちょっとした疑問やご不安、
まだ遠く将来の夢、
まずはお聞かせください。