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2024.04.21

建方(耐力壁・筋交)No.2-9

この記事の目次

1、住宅工事の全体の流れ
2、動画でサクッと見学、住宅工事
3、建方(耐力壁・筋交)のお話し
4、この工事で設計者が確認していること
5、この現場の独特なポイント(トシログ モデルハウス)

1、住宅工事の全体の流れ

この記事は以下の流れの中で、★印の工程についてです。

1)事業・基礎
2)建方(プレカット、土台、上棟、金物、★耐力壁)
3)屋根
4)木工事
5)外部サッシ
6)配線配管
7)各職人工程
8)外構

2、動画でサクッと見学、住宅工事

タイトル:建方10(耐力壁・筋交)_029 ※ご注意:音声あり!

3、建方(耐力壁・筋交)のお話し

耐力壁?筋交?

建物が地震の水平力を受けると、柱の上下(柱頭・柱脚)に大きな力がかかる。

耐力壁とは、その時、建物が変形しないように所定の耐力を負担するものである。ただ固めれば良いわけではなく、バランスよく入れていく。素材は、構造用合板、構造用パネル、パーティクルボード、ハードボード、硬質木片セメント板、石膏ラスボード、等様々な商品がある。

筋交とは、柱梁の軸組の中に入れる斜め材のこと。引張りと圧縮の力それぞれを筋交の向きにより利き方が異なるのでこちらもバランスよく入れる。

↓こちらの写真は新耐震基準以前に建てられた建物の改修工事で筋交のバランスが悪いのでやり直しているところ。

耐力壁とするか、筋交とするか、は計画上合理的な方を選択することになる。
例えばそれぞれのメリットは、、、
・耐力壁とする場合・・・設計によっては気密が取りやすい、そのまま補強下地になる(壁掛けTVなど取り付けやすい)
・筋交とする場合・・・配管が通しやすい、窓面にも取り付けが可能、柱間で納まるので外壁や内壁によってはこちらがの方が有利

大工さんのこだわり・意匠としての耐力壁や筋交

↓写真:こちらはビスの間隔をチェックしているところだが、よく見ると大工さんのこだわりが詰まっている。

耐力壁を設置するときは、通常は、柱の上から合板を貼る「大壁」の納まりとし、その上から石膏ボードやクロスを貼るなどで仕上げることが多い。
一方で、こちらの写真は、柱と柱の間に構造用合板を設置する「真壁」の納まりとしている様子。意匠として合板をそのまま使うのでこちらを選択した。
しかし、この意匠として使う場合の「真壁」納まりはなかなか手間がかかる。柱の角を丸く削る、柱も合板も比較的見栄えの良い面を使う、など大工さんのこだわりが見られる。

手間暇かけてくださりありがとうございます。

↓写真:そうしてできた竣工時の壁はこちらです。
写真左:構造用合板を「真壁」納まりとした上で、そのまま仕上材とした事例。
写真右:パーティクルボードを「大壁」納まりとした上で、そのまま仕上材とする+白いクロスを貼っている事例。

↓筋交を木材でこしらえず、スチールブレースにするデザインも可能です。無骨でスタイリッシュな空気感があります。壁と床、どちらにも取り付けている事例になります。耐力壁だと壁になってしまいますが、筋交ですと抜け感があるので、お部屋が広く見えますね。
こちらも構造をそのまま見せるとなると、大工さんもとても気を遣って施工する必要があります。誠にありがとうございました。

4、この工事で設計者が確認していること

耐力壁

設計者が行う工事監理では、計画した位置に耐力壁が施工されているか、耐力壁のビス(釘)の間隔、めりこみを確認する。一見すると全て構造用合板が使われているように見えるが、ポイントはビスの打ち方にある。
・ビスの引抜き耐力、せん断力によって性能が担保されているので、適切な釘が適切な間隔で打たれているか
・ビスがめり込んでしまうと、残りの厚みの分しか強度が出ない。特にめり込みが厚さの1/3を超えると体力の低下が顕著になるので注意が必要だ。

筋交

筋交がある場合は、特に力のかかる金物の取り合い部を中心に確認する。
・まずは筋交そのものに断面欠損はないか?配管が貫通する部分は要注意。
・柱頭・柱脚と接合されている金物は適切か?前回のブログにてご説明。タイトル:建方(継手と仕口・金物)ウェブサイトリンク→ https://yukoumesaki.com/reference/2224

5、この現場の独特なポイント

パネルログ構法

今回の現場では、パネルログ構法を、1枚4役の考え方で使用している。そのため前述した建方が終わると同時に、主な耐力耐壁の設置は完了している。工期短縮が見込める実に合理的な構法だと考えている。
耐力壁・・・壁倍率1.5倍
外壁材・・・30分防火構造(22条地域、準防火地域な)
内壁材・・・杉の無垢材の仕上げ材、天然の調湿機能、静音機能もある
断熱材・・・熱貫流率はグラスウールの半分程度だが、木材の持つ蓄熱性は特に夏に効果的である

建方の詳細はこちらのブログよりご覧くださいませ。WEBサイトリンク
https://yukoumesaki.com/reference/1119/

↓写真:芳賀沼製作所さんの制作・耐震の実験風景、工場見学会の様子(福島県南会津)

↓写真:施工風景

連窓ハイサイドライト

今回、長手方向一面をずらりとハイサイドライトを並べる計画とした。その場合問題となるのが、耐力壁や筋交である。通常は上下の梁等の横架材に挟まれていなければ、耐力を持たせることはできない。

そこで今回は、スマートブレースという商品に大変お世話になりました。横架材ではなく、柱に取り付けることができるので、リフォームなどで後付けも可能です。

写真左:コボット。こちらは横架材間に取り付ける商品。壁倍率も高く、こちらは通常シーンで活躍してもらっています。WEBサイトリンク→https://cobot.co.jp/system/

写真右:スマートブレース(ポラスグループ)。WEBサイトリンク→https://www.polus.co.jp/labo/outside-sales/sb/

↓写真:そうしてできた建物がこちらです

格子型の耐力壁

伝統工法の古民家を改修した時に使った耐力壁。あえて見せる(魅せる)耐力壁、古民家特有の空間の広がりを損なわない素晴らしいデザインだと思います。グッドデザイン賞も受賞しているようです。
この現場ではこの耐力壁に合わせてガラスを嵌め込んだ木建具もデザインしました。閉めた時はもちろん、開けた時に繊細で美しい風景であるように、と考えました。

古民家耐震パネル型面格子壁 グッドデザイン賞 ウェブサイト↓
https://www.g-mark.org/gallery/winners/9dc947b0-803d-11ed-af7e-0242ac130002

【現場のご説明1】

高性能でコスパの良い 「都市型のログハウス」を作れたら。無垢材の木の恩恵・ぬくもりに包まれる住み心地を、山や海辺の暮らしだけでなく、都市の暮らしといった多様なスタイルのある暮らしに馴染むように。私たちは “トシログ(都市ログ)” という愛称で、このプロジェクトを育てています。

2021年春、アトリエM.A.R.で「都市型のログハウス」一棟目の構想が始まりました。福島県会津の地で芳賀沼製作さんのパネルログ構法との出会い、都市に馴染む性能とデザインの検討、ウッドショック等でのコスト・計画変更、初めての構法による工事に試行錯誤すること2年半、チームの技術と熱意を詰め込んでいます。

【現場のご説明2】

養老鉄道養老駅「観光インフォメーション」改修事業

ご計画はいつの間にか始まっているもの。

ちょっとした疑問やご不安、
まだ遠く将来の夢、
まずはお聞かせください。