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2022.10.17

ポルト(ポルトガル)の都市の魅力、3つの理由

ヨーロッパの都市にはそれぞれ魅力はありますが、鮮やかに記憶が蘇る都市もあれば、ぼんやりとした印象の都市もある。都市の印象を決定づける要素が何なのかは、人それぞれアンテナが異なるので一概にはいえないが、ひとつの見方として、「都市」の外郭となる「自然環境」、「建築」、「都市計画」の3要素で捉えてみたい。そうしたときに、ポルトの街を特徴づけるものは、雄大な川と傾斜のあるダイナミックな地形、建物や歩道を鮮やかに艶やかに彩るタイル、美しく街を走るLRTとコンパクトシティではないだろうか。これらが良いかどうかの判断も個人のポリシーに依るのだが、少なくとも、ポルトにおいてこの3要素はヨーロッパの他の都市には見られない際立つ個性だと感じている。
そのほかグレリゴスの塔、目抜き通りであるリベルダーデ通り、ドウロ川に優美に架かるドン・ルイス橋、対岸ガイアエリアのワイナリーの風景など、幾つかのシンボルが散りばめられ、街の魅力を高めている

【自然環境:雄大な川と傾斜のあるダイナミックな地形】

リスボンは7つの丘を持つ都市という愛称を持ち坂の街がゆるやかに広がっているが、ポルトも基本的にはドウロ川に向かって南北に勾配のある地形で、その上に街が成り立っている。それに加えて東西方向にもアップダウンが繰り返され、平らな場所を見つけるのはとても難しい。
それ故に、ポルトの人々はスニーカーを愛用し、何かのパーティーの主役でもない限り、ヒールを履いている人は見かけない。小さな子供もお年寄りも、しっかりとした足取りで、とてもたくましい。近頃は、自転車文化圏の旅行者が増えてきた影響なのか、マウンテンバイクで移動するストイックな人種も、意外と多い。日々の暮らしの中で、自然と運動することが促されるため、健康維持には良い環境とも言える。それだけではない、坂の街の散歩はとてもドラマティックで楽しい。ふとしたときに、視界がひらけ赤いスペイン瓦の屋根の広がりにはっとする、建物の間からドウロ川を横切るヨットやクルーズ船を見つける、メインストリートは階段状の舞台装置のように賑やかな雰囲気が迫ってくる。世界遺産となっている旧市街地は曲がった小道や階段、古い建物やかつての水道などの遺構もあって特に面白い。 

【建築:建物や歩道を鮮やかに艶やかに彩るタイル】

建物を彩るのは、「アズレージョ」といわれるタイルだ。優美な曲線による緻密な描画が特徴的で、色鮮やかなものから青単色のものまで様々な種類がある。正方形の絵付けされたセラミックタイルのことで、アラブ語の「zellige」、「なめらかな磨かれた石」という意味が名前の由来である。その歴史は600年前に遡る。15世紀、スペインよりムデハルスタイルのタイルが伝わった。当初は表面に凹凸があり極彩色のだったが、17世紀には中国や日本の磁器の影響を受けた青単色の表面が滑らかなタイルなども登場した。比較的安価に生産できるように変化したことから大衆化し、次第にポルトガル独自の文化へと醸成されたのだ。 

歩道を彩るのは、「カルサーダ」(Calsada)といわれる黒と白のタイルだ。完成された姿からは想像し難いが、5cm角の立方体が敷き詰められたものだ。なぜ立方体なのかというと、舗装が古びて修繕するときに、面の数だけ6回使い直せるためという。なるほど、とても理にかなった考え方である。また、白と黒のというシンプルなアイテムながら、表現される模様の独創性は奥深く、艶のある表面は雨に濡れるといっそう美しい。 

【都市計画:美しく街を走るLRTとコンパクトシティ】 

ポルトのダウンタウンから空港までLRTで30分、長距離列車が停車するカンパーニャ駅(Campanha)まではLRTで10分、街の中心にあるサン・ベント駅(São Bento)はポルト近郊列車のターミナル駅であり、ポルトの外への各拠点が近接し便利の良い公共交通網で結ばれている。このため、首都リスボンやヨーロッパ各国へのアクセスへの負担が少ないと言える。そして、中心市街地は生活に必要な場所のほとんどに徒歩でアクセスできる。ポルトは外に出ていくにも便利で、中で暮らすにもちょうどいいスケール感の街なのだ。 

また、このLRT自体も、なかなかユーザーフレンドリーにできている。中心市街地では地下を走るが、それ以外のエリアは地上を走る。駅舎は、ほとんどプラットホームと屋根のみで構成され、いたってシンプルだがスタイリッシュ。特にダウンタウンのサン・ベント駅(São Bento)はポルトガルの巨匠アルヴァロ・シザ(Álvaro Siza)によって設計された気持ちが良い駅だ。プラットホームと街は改札で隔てられることはなく、控えめに立つ黄色い機械に、ICチップが搭載されたチャージ式のカードをタッチする仕組みだ。LRTの車体は低く、それに合わせてホームが低くなっているため、ホームと道路にほとんど段差がなくバリアフリーにも配慮されている。街中を走行する際にもレールと道路を隔てる柵はなく、LRTは街の風景に溶け込んでおり、ドン・ルイス橋の上では歩道とも共存しているため、橋の上を歩くときはとても開放的な気分になる。当然、自動車があった方がより便利だが、持っていなくても大抵の場所にはLRTでスマートにアクセスできる。そのほか、バスが縦横無尽に走りLRTを補完するだけでなく、路面電車も風景に華を添えている。 

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