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ブログ・お知らせ
2024.12.08
大分の古民家宿が第11回再築大賞理事長賞を頂きました!
第11回再築大賞(全国古民家再生協会)にて、理事長賞をいただき、昨日お施主様と共に表彰状を拝しました。11月末に新潟にて^^
大分県宇佐市に立つ古民家の一棟貸ゲストハウスDENGU。
空き家となって久しく劣化が進んでいた古民家を改修しました。
名物の美しい田園風景、ジビエ、すっぽん、葡萄狩り、宇佐神宮、竹細工工芸、サファリパークなどのファミリーの遊び場、などなど地域の魅力も抜群です。
まずはこの古民家に可能性を見出された施主の辻田建機様に敬意を表し、作り手の江河工務店様、運営をサポートされているGLOCAL様、建物の診断にご協力いただいた大分支部の皆様、誠にありがとうございました。
しかし何より大切なのは、作って終わりではなく、息を吹き返したこの建物を、生き継いでいくことかと思います。近隣で道の駅運営も行う施主様を含む、地域のプレイヤーの方々が連携して、コンテンツやPRなど地域活性化に努めておられます。ソフトとセットで、古民家が、脱炭素時代の地方創生を象徴する存在になればいいなと思います。
またこのアワードにチャレンジできるよう頑張っていきたいと思います!!!
↓↓↓公式ウェブサイトのリンクはこちら
https://saichiku.com/pastawards/result11
ご参考:デザインのポイント
➀脱炭素時代に於ける提案
【1、背景】
対象の古民家は、一次産業が営まれる里山に位置し、空き家となって老朽化が著しく動物の棲家となるなど、集落に影を落としていた。
【2、展望】
古民家をゲストハウスとして活用しすることは、脱炭素時代を象徴する地方創生の一つモデルとなると考えている。開業後に、それを本当に持続可能なものとするには、ハードルが高いのが現実であるが、施主は、道の駅運営等の地場のプレイヤーでもあり、その経験と地盤を活かして、地場の魅力を掘り起こし、地域活性化に役立ちたいという思いとともに立ち上がった。これは1棟目であり、地域とともに2棟目3棟目へ展開したいと望んでいる。
【3、廃棄物・CO2排出量の削減】
対象建物から割り出した芯材の古材量は8㎥であり、削減できた二酸化炭素量は6,813kg※と算出したまた、地域の財産である田園風景を楽しむための大きな窓や、前庭に向けた縁側を計画し、自然採風を促し、断熱対策を施すことによりエアコンの効率化を図った。
※参考図書:古民家再生協会発行の「古民家の調査と再築」より算出
②循環型建築における提案
【1、建設・解体】同集落に居住する大工の起用、リサイクル事業部門を持つ施主による解体・家財回収等、施工効率・資材活用等を積極的に推進した。
【2、運営のためのハード】無人運営を行えるように、IOT管理による鍵・防犯等の設備、清掃・デリバリーを考慮した効率的な動線・施設計画とすることで、継続的に事業しやすい仕組みとした。また、ゲストに対して、分別のゴミ箱を設置することでリサイクル意識を促し、古民家の快適な滞在体験、地場の食材を使った囲炉裏BBQや美味しい釜炊きご飯などの体験を通して、古き良きものを大切に使い続ける意識の啓発に繋げたいと考えた。
【3、運営のためのソフト】施主を含む地場のプレイヤーが連携し、地場のコンテンツをゲストが享受し、経済活動の活性化に繋げられるよう取り組んでいる。具体的には、施主は近隣で道の駅を運営していることから、道の駅でゲストにチェックインをしてもらい、そこで地場の食材の購入や、地場の体験アクティビティを知るための情報収集ができる仕組みとしている。また、農泊まちづくり協議会のウェブサイトでも発信を行っている。
➂構造上の安全性、耐震性の確保
・古民家再生協会が実施する総合調査を行い、古民家鑑定、床下インスペクション、伝統耐震診断を行った。
・同上の伝統耐震診断により、既存の構造体の一定の安全性を確認できたため、柱梁については既存の材料や架構を生かしてプランニングを行った。
・また、傷みが著しかった床下については、石場建をベタ基礎に変更した上で、適宜束を入れ替え、土台固めを入念に行うなど、予算の優先度を高め安全性や耐震性を確保した。
・元茅葺きの屋根についてはガルバリウムの屋根とし、蔵についても2階の床を減築しワンルームとすることで、全体の重量を低減する計画とした。
・総合調査を行うことにより、限られた予算の中で安全性・耐震性への対策を適切に判断することができ、今後の事業性の確保に繋がったと考えている。
④維持管理などの工夫
【1、美観の維持】
計画範囲は、納屋撤去、庭木の再造成を行い、常に管理可能な範囲に減じる計画とすることで、美観の維持に配慮した。
【2、運営コストの低減】
ゲストが快適な温熱・衛生環境を確保できるよう、時代に即した居住性能(気密断熱性能の向上)とすることで、エアコンの電気代削減効果を図った。また、同時に防虫効果にも繋がるため、管理者の掃除のしやすさにも配慮した。
【3、設備更新コストの低減】
給排水計画については、現行法に合わせて、敷地の西側に浄化槽や排水管計画新設した。また、別棟にあったトイレお風呂は取り止め、主な水回りは西の外壁に面するように集中させて計画し、露出配管とするなど、今後のメンテナンスや更新性に配慮した。
【4、建物更新コストの低減】
小屋裏や床下については、風通しの良い計画とするとともに、人や点検ロボットが侵入しやすいルート計画とし、耐久性・定期点検のしやすさに配慮した。
⑤デザイン性における工夫
【1、地場工芸と風景が融合するデザイン】
・客室の窓は四季折々の田園の眺望を印象的に切り取る計画とし、杉格子の内装材はすっきりと気持ちよく、外への意識を高める意図とした。
・地場の竹細工職人(渡辺文明氏)ととも、にオリジナリティのあるインテリアを創出を行うことで、ゲストの文化体験の場とした(竹細工でできた、玄関のデザインウォール、共用ホールのペンダントライトやブラケットライト、ミラーやタオルかけなどの備品類など、複数散りばめた)。特に、玄関のデザインウォールは、天然の真竹を使って美しい竹林がゲストを迎えるイメージでデザインしており、小窓から田園風景が覗けるような仕掛けとすることで、ゲストの期待感を高める計画とした。また、竹という手に入りやすく加工しやすい特性を生かし、一部が老朽化した際に、部分的に取り替えられるよう、構法にもこだわった。
【2、次世代に繋ぐ普遍的なデザイン】
今回の古民家の特徴として見られた、縁側、建具の開放性、蔵の陰影感、元茅葺き屋根の小屋組現し、囲炉裏、釜などを適材適所で計画し、ゲストが囲炉裏BBQや美味しい釜炊きご飯などの体験を通して、古民家のおおらかな居心地の良さを感じられる場とした。
【3、集落のコミュニティスペースとしてのデザイン】集落の集会などで多くの人と受け皿ともなれるように、玄関は広々と使いやすく、広い前庭と縁側を繋げることで行き来を円滑に、内部の建具を外すと一体的な大空間となるよう計画、別棟の在来工法の建物もワークショップを想定して改修を行った。