私たちの実績
施主は、定年退職後の第2の人生の場所を糸島に選んだ。ここで、アスパラと苺を育て出荷するために、もともと納屋として使われていた離れの建物を、事務所として改修した。特に求められたのは、作業性=明るさや効率的な動線であった。
敷地は、糸島の豊かな田畑が広がる農業用地エリアにある。建物は、公民館や大通りに面しており、もともとは母屋の門として使われていたこともあり、母屋の顔として最低限の外装の更新も求められた。
空間構成としては、出荷準備や事務を行うための出荷調整室、農薬の調合や管理を行うため農薬調製室、トラクターと軽トラを置くための駐車スペースから成る。
全体としては、既存の柱や梁の存在感やそのままの風合いを残し、極力シンプルに計画した。
明るさについては、人が滞留する出荷調整室を南面に計画し、開口を複数設け自然光や通風を確保した。夜間作業や保安のため、照明には人感センサーを用いた。
動線計画については、外部から一輪車等で出荷調整室へ運搬することを考慮し、段差のない計画とした。
また、出荷調整室については、屋根や土間コンクリートにも断熱材を充填し、居住性を高めた。
外観は、基本的には既存の意匠を踏襲した。これまで大きな地震に2度耐えてきたため構造には手を加えていないが、屋根は瓦が崩れ落ちる等損傷していたため、波板鋼板に取り換えた。外壁は、周辺の建物との調和も考慮し、外壁は焼き杉とし上部は付け柱した。唯一、古い漆喰壁を残した壁面には、主要な入口として新しく建具を制作し、当初からの漆喰の風合いの良さが、じわりと引き立つよう計画した。
セカンドライフとともに、築90年の納屋に息吹を。
この糸島という場所で、施主が思うままに楽しく末永く、第2の人生を謳歌されることを願う。
<概要>
プロジェクト期間|2018年12〜2019年5月
設計監理|梅﨑裕子
施工|有限会社三昭建設